【東京五輪】混迷!揉めるボート会場に韓国開催も視野?彩湖を推す選手の声はどこへ…

Photo by Paul

 東京オリンピックの会場建設について、先日、小池都知事が、費用の高騰を理由に、特に予定より費用の開きが大きい3競技の施設を見直す意思を示した。

あまりにも唐突すぎた計画の見直しのつけ

 オリンピックの競技場は、大会組織委員会と各競技団体が協議の末、国際競技団体(IF)の了承を得た上で、国際オリンピック委員会(IOC)の理事会が承認して決まる。そうした過程を経て現在に至っているわけで、それなりに時間と労力を掛けてきているのは確かだ。

 それを、突然ひっくり返されれば、戸惑うのは当然と言えば当然で、特に対象となった競技関係者からすれば晴天の霹靂ともいえる事態のはず。

 リオ五輪カヌーで銅メダルを獲得した羽根田卓也選手もその気持ちを代弁している。

「僕の種目が東京以外で行われれば本当に寂しくて絶対に嫌だと思う。4年後を楽しみにしている選手にとって、こういう問題で揺れることはよくない」

出典:スポニチアネックス

 羽根田選手はカヌーでもスラロームなので、西臨海公園で実施される予定だが、スプリントとボート競技の会場が見直しの対象になっていることは、心中穏やかではないだろう。

 ◇  ◇  ◇

 「日本人はダメな理由を探すことにかけては天才的」
 誰かがこんなことを言ったとか言わないとか・・・

 要は、現行の計画案である「海の森水上競技場」を推進している、組織委員会や競技団体が、新たに浮上する候補地(主に長沼ボート場)に対し、否定的であることへの皮肉である。

 長沼ボート場のある、宮城県の村井知事はこうも言っている

会場見直し案が発表される前に小池都知事と話し合っていたことを、大会組織委員会が「水面下での話し合いは極めて不透明」と反発したことについて

「あれを聞いて非常に私は組織委員会に不信感を持ちましたね、逆にね。結局、なんでもかんでもいちゃもんをつけてるようにしか見えないですね。あれじゃ、オリンピックうまくいかないんじゃないかと思いますよ」

出典:TBS News

 今や、これまで全く関係のなかった、宮城県知事まで参戦してきての批判合戦、もはや、アスリートファーストどころか、本来の大義であった予算の削減さえも、結局はどの数字が本当なのか、各々出してくる数字があまりにも不明確なうえ、大雑把すぎて、誰の言う事を聞けばいいのか分からなくなっている。

 新たな候補地として名前が挙がった場所の関係者も、少々「前のめり」すぎて、本来のオリンピックのあり方や、アスリートの気持ちが置き去りにされているように見える。現状、マスコミを含め、組織委員会のすべてを「悪」とする風潮が、やや冷静さを欠き、判断を誤る可能性が懸念される。

埼玉の彩湖も候補に挙がり3つ巴か?

 元々、この問題が持ち上がった時から、アスリートの声を聞いたマスコミが、海の森、長沼と共に、埼玉県の戸田市にある「彩湖」の名前をあげて比較をしていた。しかし、あまり積極的なアピールをしていないようにも見えた埼玉県も、ここへ来て手をあげたことで、3つ巴の様相を呈してきた。

 本来、見直しの議論となった際、アスリート人気が高く、実現性が高いと見られていた「彩湖」の名前が真っ先に上がらなければいけないはずだが、何故か「長沼ボート場」が先に出てきたのもアスリートファーストという面では疑問が残るところ。

 ◇  ◇  ◇

 ちなみに「彩湖」とは、埼玉県戸田市にある、戸田漕艇場(とだそうていじょう)に隣接する調整池。

 戸田漕艇場は、前回の東京オリンピックで使用された施設ではあるが、実は整備されたのは、それ以前の1940年(昭和15年)に開催が予定されていた、幻の東京オリンピック(日中戦争により返上された)の為に整備された、歴史のある場所。

1610-19-03Photo by ちょこたび埼玉

 別名「戸田ボートコース」として知られ、一部を戸田競艇場としても使用し、全国のボートファンや競技者の聖地として名高いコースである。

 そこに、隣接する「彩湖」は、荒川の増水時の被害に備えた調節池で国交省の管理下にある。大会が開かれたことはないが、ボートやカヌーの練習やレジャーに使用されている。

 戸田ボートコースの周辺は、ナショナルトレーニングセンターのボート強化拠点施設に指定されていることもあり、大学や企業などの艇庫、合宿所が建ち並んでいる。聞くところによると長沼ボート場のある「宮城県からも戸田に合宿に来る」なんて話もあり、それだけ施設が充実していることの表れといって良いだろう。

 ただ、彩湖はボートコースとしての使用を想定して作られた訳ではないので、現時点で国際基準に沿った直線が取れていない。コースとしては未完成なので、岸を削るなどの工事は必要となる。しかし、観客席や艇庫などを仮設にするなどすれば、費用はだいぶ抑えられるという。

 ◇  ◇  ◇

 ここからは、長沼ボート場と彩湖の比較となる。

 選手村から約20kmと東京から近い彩湖ならば、選手や観客のアクセス、宿泊の問題は無くなる一方、長沼の場合はそこが一番のネックとなる。

 オリンピック後の活用(レガシー)という面でも、東京圏にあり、すでにボートの聖地として全国から競技者が押し寄せる戸田という場所には優位性がある。

 そして、最も重要なのが選手の声だ。

岩手国体でボート選手、監督100人にアンケートを実施した。見直し案が出た海の森水上競技場6人、有力な代替候補に挙がった宮城・長沼ボート場17人に対し、埼玉・彩湖が77人と圧倒的多数を占めた選手目線の結果は興味深かった。

出典:朝日新聞

 だいたい、どこの機関が調査しても、7~8割は彩湖の名前を上げる。

 また、先の羽根田選手の言葉にもあるように、選手が目指しているのは東京だ。少なくとも東京圏と言われる範囲(選手村から通える場所)からは、離れたくない」というのが選手の本音だろう。

ゴタゴタが招いた不可解な韓国開催の脅し

 ハッキリ言って、韓国のボート会場を使うなんて話が出て来たら、選手は崩れ落ちるだろう。もちろん日本人ならば皆ショックを受ける。だが、そんな突飛な話がどこからかリークされ、マスコミに流れるといった事態が現実に起こったのだ。

 しかし、なぜ、国内で代替候補が複数上がっているにも関わらず、さらに遠くの、しかも国外である韓国ということになるのだろうか・・・

 名前が上がった、韓国の忠州市にあるボート場というのは、2014年アジア大会のボート会場として使われ、コースとしては整っているという。本当は、比較するのも嫌なのだがしょうがない。

 ◇  ◇  ◇

 この韓国のボート場には絶望的な問題がある。それはアクセス。

 ソウルから車で2時間、鉄道も高速鉄道などはなく、普通列車しかないというのだから話にならない。東京から新幹線で行ける長沼でさえ、アクセスが問題とされる中、基本、高速バスでの移動と言われる韓国での開催など、逆にIOCに「本当にそっちで良いの?」と聞きたいものだ。

 別に、資金が底をついてどうしようもないからと揉めている訳ではなく、日本国内で開催したい場所はいくらでもあるという現状で、この話が出るのが非常に不可解だ。あくまでも、どんぶり勘定で膨らみ続ける予算を抑えるために、小池都知事がメスを入れただけで、むしろ、海の森の工事は始まっているし、そもそも東京都も、組織委員会も、政府も、GOサインを出していたこと。

 この話の出どころは不明だが、大手マスコミ(テレビ)が取り上げたことは重く受け止めなければならない。このように韓国開催などと良からぬ噂まで流れると、問題が長引いて、ちゃぶ台をひっくり返してしまった小池都知事にも、批判が向かう可能性もあるだろう。

1610-19-02Photo by Paul

海の森を不安視するのは日本人だけ?

 あるテレビ番組で、興味深い話を聞いた。元JOC参事 春日良一という方がこう言う

「海水については世界のボート競技では問題になっていなし、珍しいことではない。アテネは海水、リオも海水が入っていた」
「海水に異議を唱えるのは日本人だけ。国際的ボートの水準から言ったら時代遅れ」

 選手からは、海水でやることに否定的な意見が多く聞かれる。だが先日、小池都知事と面会した国際ボート連盟の会長が、海の森を推進していることに少々疑問を持ったが、この春日という人の言うことが本当なら、それも納得ができる。

 しかし、国際経験のある日本人選手も、海水に難色を示しているケースがあり、実際はどうなのかは今のところハッキリしない。

 また、ここへ来て「海の森」も費用を大幅に削減できるといった話も出てきて、事態は流動的になりつつある。結局は、お金を掛けても、オリンピック後にどう活用できるかが焦点であり、どこが一番安く出来るかというチキンレースは、もはや無意味なのかもしれない。

 海の森は、コースなどの本体以外にも周辺整備もが含まれ、オリンピックを機に環境整備をしたいという思惑もある。例えば、同じ100億を東京の臨海部に使うのか、宮城の田舎町に使うのかは、20年以降を考えると自ずと、どちらが有効的かが見えてくるだろう。

 あくまで筆者の個人的な結論だが「彩湖」ならば、戸田をボートの一大聖地として、将来を見通すことができるため、アスリートファーストなら「彩湖」がベスト。多少費用がかさんでも無駄にはならない。そして、競技のアピールなど、認知度を高めるための派手さや、臨海部の整備などを考えれば「海の森」がベストではないが、ベターといえる。

 「長沼」は、前回の記事でも触れたように、晴れ舞台としては選手が気の毒にしか思えない。復興を盾にすれば、特に日本人選手はあからさまに嫌な顔は出来ないので、地元との温度差など微妙な空気も感じる。

 ◇  ◇  ◇

 どちらにせよ、日本ではボート競技を軽く見ている節があり、今回のようなゴタゴタに巻き込んでいるが、発祥と言われるイギリスを筆頭に、ヨーロッパでは非常に人気の高い注目競技。復興という名目も分かるし聞こえも良いが、海外の選手や観客には関係のないこと。

 日本ではマイナー競技かもしれないが、ボートをあまり甘く見ないほうが良い。

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